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zoom RSS 中国 小説・金瓶梅 天下凶徒人食人 

<<   作成日時 : 2013/05/10 22:18   >>

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インコに見つかった。金瓶梅を読んでるところ。
チューをしている怪しげな表紙なもんだから、探るような目で睨まれた。
「ちゅーごくの古い本なのよっ」って慌てて取り繕ってみたものの、視線は冷たいままだった。

でも、中国のこと勉強するにはいいかなあ、と思って頑張って読んでみた。長かった。かなり面白かった。

金瓶梅。時代は北宋の8代皇帝・徽宗がおわしました頃(とはいっても実際描かれているのは明の万暦年間の様子なのだそうだ)。舞台は山東省清河県。さほど大きい都市ではないが、首都・東京(とうけい、つまり開封府)に近くて皇族のお屋敷が置かれていたり、近くに運河があった関係で商業が盛ん、という土地柄。
いろんな商売、金のやり取り、廓や、芸者や、役所の話、友達付き合い、親戚付き合い、そして正妻・お妾さんによる勢力争い、女中いじめなどの話。
で、主人公・西門慶は言わずと知れたプレイボーイ。“雲や雨や”の“三級片”場面が毎度出てくるから、「そこまではっきり書かなくても」「しつこいぞ」って思うのだけど。

それでも実はこの小説、中国社会への風刺であり、批判であるのだという。魯迅先生だって“時事の糾弾”として見ているのだそうだ。日下翠氏の著書によると、「中国文学において、文人が作品の中で、ひそかに敵を攻撃したり、逆に自己を弁護したりすること、つまり文学作品を一種の道具として使うことは、ごく当たり前の伝統であった。すなわち、作品とは芸術のためだけに書くのではなく、文人の創作には、そういった一面があることは、心しておくべきであろう。」なのだそうだ。
そう言われてみればせんだって読んだ莫言氏の小説「豊乳肥臀」の文章にも“一種の道具”としての気配が感じられた。なんでこんな回りくどいことするのかといえば、そうせざるを得ない社会背景があるわけで、結果的に中国伝統の手法にならってしまうことになる。さすが中国、歴史をちゃんと守ってる。

この本のすごいところは、しつこいくらい細かいことが書いてあるところ。
例えばあいさつに出てきたときの月娘の服装。「頭には金の横筋の入った緑と白のちりめんの冠と海獭の臥兎児、身には白綾子対襟の上着と沈香色の金襴の袖なし、ゆったりした玉色の綾子の裙子、耳には真珠の耳輪に金の鳳型の簪、胸には金の小楊枝・耳掻きなどを一組にした襟飾り、裙子のあたりには紫の金襴にふさが八つついた巾着に、鍵をつるした五色の紐、紫の金襴のボタン、それに白綾子の高底靴のいでたち」
こんなに細かくヒントをくれるのだから、大真面目にドラマを作るとしても再現しやすいのではないだろうか。

例えば飲み物。「かぼちゃのさねのお茶」とか「布で濾して飲む蘑鮪」とか「温めて飲む葡萄酒」とか「香菜とゴマのお茶」とか。暖かい葡萄酒ってグリューワインみたいなものなのだろうか。香菜のお茶って生の葉を使うのだろうか。一体どんな味なんだろう。

単純に面白いのは女性たちの戦い。一人としていい人は出てこない。比較的穏やかな正妻・月娘や3番目の奥さん・孟玉楼だって、保身のためにまたは憂さ晴らしのために都合のいい悪口を言ったりする。
女同士の派閥も怖い。あからさまに貶めるまではいかなくてもいびり倒す場面は結構出てくる。いい人づらして人に譲っていては生き残れないシビアな世界(ご主人様に気に入られないと虐待されたり売られてしまう)。

一番面白いのはやっぱり潘金蓮。お金持ちでない分、のし上がる気持ちが人一倍強く、あくどい手段もいとわない。音もなく寄ってきて立ち聞きをするのが得意で、人の弱みにつけこむのが上手。頭もよくて口がたつという、なんとも敵に回したくない女。
運が強いのは春梅。性格もキツイが柔軟でしたたかなところが運を呼んだのかなあ。
一番取っつきやすそうなのは孟玉楼。潘金蓮とお友達でいられるのがスゴい。
かささぎはどのタイプかと言ったら、間違いなく孫雪娥。不器用で貧乏くじを引くタイプ。
一番嫌いなのは応伯爵。こういう調子のいい奴、苦手なんだよなあ。

この本に出てくる女性たちは、よく銀のかんざしを頭から引き抜いてお礼のプレゼントにする。かんざしは銀でできているから通貨に準じ、手間賃代わりに渡す意味があるのだけど、「お礼にこのかんざしをどうぞ」って差し出す場面がたくさん出てくる。何かしてもらった時、言葉だけではなくいちいち物で感謝を示すのが流儀らしい。

警察につかまったり、裁判で不利な判決が出そうなときは、裏で大金が舞い飛ぶ。人脈と財力があれば、うまく世渡りできる仕組みになっている。人治政治の歴史も悠久だったわけ。

あちこちに教訓が書いてあるのも面白い。
例えば、
「巧(じょうず)はずるすぎ拙(へた)はぬけてる
善(ぜんにん)は意気地なし悪(あくにん)はわからずや
富(かねもち)はねたみを買い貧(びんぼうにん)は恥をかく
勤(きんべん)はがつがつもうけ倹(けんやく)はけちけちためる
誰でも拙(へた)見りゃ笑うけど
機敏にやればあやしまれる
なんの思案もお気には召さぬ
体面保つはむずかしい」
とか、
「情でいったらまとまることも 正直通せば嫌われる よろずあっさり生きるがよろし とかく人情つづかない」
とか、
「真人(しんじん)は相(かたち)を露わさず、相を露わすは真人ならず」
とか、
「恨みは解くべし、結ぶべからず」
とか、
「ゆめゆめ人を欺くな 神様いつも鼻の先  もしも報いがないならば 人が人食う世ともなる(为人切莫用欺心,举头三尺有神明。若还做恶无报应,天下凶徒人食人。)」
とか。

最後に。お下品言葉について。これだけ見ても面白すぎる。
このまぬけめ。あのちんちくりん。こわっぱ野郎め。あの極道者め。この悪党。いい死にざまをしないくそ悪党め。
この執念深いくそ下郎め。極道のこわっぱ。この強盗め。このくたばりぞこないめ。くそ下郎。愚図め。この唐変木。お前というろくでなしは。あのぐうたら。ぼけ犬。恥知らずめ。犬畜生め。この奴隷め。この死にぞこないの奴隷め。おのれ死にぞこないのゴロツキめ。両方のご機嫌をとるふたまた膏薬の主人騙しの下郎め。
すれっからし。このきちがい婆め。くそ婆。あまっちょ。あの奴隷め。このあばずれめ。やりて婆。やりてばばあのくそばああ。この雌め。この蓮っ葉め。下郎の妾。
すべた。このすべため。すべたども。恥知らずのすべた。なんてずるいすべただろう。このすれっからしのすべため。犬も食わないすべた。このくそ奴隷のまおとこすべため。
あの忘八。恥知らずの忘八。くそ忘八。見てくれがいいばかりで食べられない忘八め。
おこも。ぽんびきども。この恥知らずの黄猫の黒尻尾の強盗め。
この死にぞこないのめしゅうど(囚人)め。尼さんの息子。ひとの歯くそだってかじるお口だわ。
あの罰当たりの、息子は泥棒で娘は女郎の犬の骨め。早死さん。
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