天問1号火星探査機 長征5号遥4ロケット 老舎「猫城記」

火星探査機の打ち上げ成功。中国ではきっと盛り上がったはず。かささぎがたまたま見たのは火星に関する“科幻作品”について語る番組だったが、老舎の「猫城記」を取り上げていて勉強になった。老舎がSF小説を書いていたなんて全然知らなかった。そこにいた火星人は猫の姿。小さな猫耳が生えた“猫人maoren”。なんかかわいい。
ほかには「从地球到火星」「火星纪事」「火星建设者」「红火星绿火星蓝火星」「火星孤儿」という小説が出てきたがどんなのかは知らない。あと日本にも火星を描いた有名な小説があるそうだが聞き取れなかった。
番組の中では、探査機が火星に無事たどり着くのはとても難しいことだと言っていた。日本ののぞみの例もある。
新京報にも記事がたくさん載った。勉強のために頑張って読んでみた。一部メモしておく。
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2020-07/24/content_786802.htm?div=-1
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2020-07/24/content_786803.htm?div=-1
http://epaper.bjnews.com.cn/html/2020-07/24/content_786806.htm?div=-1
●国際協力
今回の火星探査は、欧空局(ESA。欧州宇宙機関)、法国国家空间研究中心(CNES。フランス国立宇宙研究センター)、奥地利研究促进署(FFG。オーストリア研究促進庁航空宇宙局)、阿根廷国家航天委员会(CONAE。アルゼンチン宇宙活動委員会)などと協力した。ロケットの整流罩(フェアリング)にこれら機関のロゴマークが付けられているのは、中国の宇宙技術が国際的な協力と支持を得ていることを示し、中国が逆全球化(反グローバリゼーション)に反対していることを示している。

●今回の火星探査プロジェクト
「天问一号」は打ち上げ、火星までの飛行、軌道に乗る、火星上空に停泊する、火星に着陸する、探査するの6つの段階を踏む。計画では来年5月ごろに着陸する予定。

●キャリアロケット長征5号と火星探査機天問1号
7月23日、文昌航天发射场(場所は海南岛东北海岸)にて、ロケット长征五号に搭載された天问一号火星探测器が打ち上げられた。中国初の火星探査機の打ち上げが成功した。
今回打ち上げに使われたのも长征五号シリーズのロケットだった。长征五号遥五ロケットは今年、月面探査を行う嫦娥五号探査機の打ち上げも予定している。来年は长征五号B遥二ロケットが宇宙ステーションのコアモジュールの打ち上げを予定している。长征五号は新世代キャリアロケットとして頻繁に採用されるシリーズであり、今後も活躍の中心になる。
长征五号遥四キャリアロケットで打ち上げられた天问一号は、約2167秒後に予定の軌道に乗り、火星探査の旅をスタートさせた。火星まで約7か月の飛行を続け、火星に近づき、減速して、周回軌道に入り、タイミングを合わせながら観察や着陸、探査を行うことになっている。その一連の目的は、減速制御、突入、下降、着陸、長期的な自主管理、長距離からの探査制御通信、地表探査など高度な技術を駆使して観測探査を行うことと、独自の深宇宙探査工程システム(设计、制造、试验、飞行任务实施、科学研究、工程管理、人才队伍を含む)による、中国の深宇宙探査活動を推し進めること。
科学的な目標としては、主に火星の形態と地質構造、表層土壌、水や氷の分布、表層物質の組織、電離層、気候と環境、火星物理场(物理的分野、磁場など)、火星内部の構造などの研究を行うこと。
昨年末から今年5月にかけ、长征五号遥三ロケットおよび长征五号B遥一ロケットの打ち上げに成功してきた。长征五号打ち上げに関する問題点は完全に克服、正確性において十分な検証を挙げることができた。この度の打ち上げで长征五号の正式な導入が始まった。
天问一号の重さは5トン近くある。环绕器(オービター)、着陆器(ランダー)、巡视器(ローバー)で構成されており、中国で打ち上げた最も重い深宇宙探査機であり、世界屈指の重量でもある。※ローバーは进入舱と火星车からなる。火星车の重さは約240㎏、玉兔二号月球车の2倍の重さ。
中国初の火星探査は2016年1月に党中央、国务院で批准され、国家航天局が実施してきた。具体的には探査機、キャリアロケット、打ち上げ基地、観測と制御、地上支援システムの5つのシステムの立ち上げだった。「国家航天局探月与航天工程中心」が総責任単位であり、中国航天科技集团有限公司に所属する中国运载火箭技术研究院がキャリアロケットを、中国空间技术研究院および上海航天技术研究院が探査機を、中国卫星发射测控系统部が打ち上げと観測制御を、中国科学院国家天文台が地上支援システムとデータ処理を担当してきた。
中国の火星探査は開放されたプラットフォームで進められており、港澳地区の大学を含む全国各地の研究機関が積極的に参加した。また、ESA、フランス、オーストリア、アルゼンチンなどとプロジェクトを進めてきた。火星探査において世界的には既に豊富な成果が上がっている。例えば水の存在を示す証拠が上がっていることや生命を探すことなど。その熱意は世界中で高まっている。火星探査のチャンスは26か月に1度、時間は短い。今年は多くの国が火星をめがけて探査を行う。
长征五号火箭は航天科技集团有限公司に所属する中国运载火箭技术研究院が研究開発したもので、中国最大最長最強のキャリアロケット。起飞质量(離陸重量)は約870トン(具备近地轨道25吨、地球同步转移轨道14吨)であり、アメリカとロシアを含め世界的に見ても主流のロケットである。今後の载人航天工程空间站建设や、探月工程三期にも长征五号が採用される予定。
この度の长征五号遥四ロケットの打ち上げスピードは11.2㎞/秒まで加速されたところで分離され、探査機が火星への軌道に乗せられた。ロケット最終段は太陽系人工衛星と同じように、太陽を周回する。
打ち上げには十分な発射エネルギーが必要であり、十分な初速度が必要となる。长征五号ができる前に一番力があったのが长征三号乙ロケットで、2トン前後の探査機だったら火星軌道に送れただろうが、长征五号なら5トンを超えても載せされるので、今回はやはり“胖五(长征五号)”の出番となった。
长征五号の总设计师によると、将来は8トンの高軌道衛星を打ち上げることができるようになるという。さらにロケット上段を調整すれば、5.5トンの高軌道衛星を一度に2機打ち上げることができるようになるという。
长征五号は月から太陽系惑星までを請け負う。今までは长征三号甲シリーズが月探査機の打ち上げを行い、嫦娥一号から嫦娥四号までを担ってきた。しかしもっと遠い場所にもっと重い探査機を送るのであれば长征五号に任せることになる。
計画では今年、长征五号遥五が嫦娥五号(中国初の月サンプル回収を行う)の打ち上げをすることになっており、来年は长征五号Bが宇宙ステーションコアモジュールと実験モジュールの打ち上げを行うことになっている。

●中国初の火星探测プロジェクト
数年間、目立たない形で研究が進められていたが、今年4月24日の「中国航天日」という記念日に、このプロジェクトの探査機に天问一号と命名したことが発表された。屈原长诗《天问》の、“日月安属,列星安陈”にちなんだ。
天问一号のプロジェクトは基本的に2013年に実施された嫦娥三号プロジェクトと似ている。舞台が月から火星に変わっただけのことである。
长征五号によって探査機は約200㎞の上空まで打ち上げられ、その後何度も修正をして7か月で火星付近に到着、約200日後にブレーキを正確にかけて火星の重力に引かれ、火星周回軌道に乗る。そのまま2~3か月周回飛行を続け、着陸のタイミングを図る。探査機は2つに分離され、オービターはそのまま飛行を続けながら、ローバー着陸のため地球と通信を行って、ローバーを火星に着陸させる。その後、火星车は着陆平台を離れて、スロープを通って地表に降りる。
地球から月まで38万kmだが、火星までだと近くて5600万km、もっとも離れたときは4憶㎞。遠いぶん通信は遅れ信号は弱くなる。信号の伝達を一往復するときもっとも遠い場合で46分近くかかる。
ローバーを下す行程に7分かかる。その間何か起こったとしてもすべて機械が自分で判断して行うことになる。火星の大気はとても薄く、月とも地球とも異なる環境において、着陸するときは天问一号の下部に取りつけられた发动机で反動を起こしながらかつパラシュートを使って減速する方法で、7分間で時速2万㎞からゼロに減速させる制御は非常に複雑であり、事前に複雑なプログラムを搭載しておく必要があった。
地球から火星までの4憶㎞を、よく「パリで打ち上げたゴルフボールを東京でホールインさせる」と例えるが、今まで打ち上げられた44台の探査機のうち、実際にホールインできたのは半分だけである。
地球が火星に近づく、26か月ごとに訪れる約1か月間。これが「打上げウィンドウ」が開く期間。ESAとロシアの合作による火星漫游车(ExoMars)は2022年に延期されたが、今年はUAEの火星探査機希望号(ホープ)や、中国の天问一号、アメリカの毅力号火星车(Perseverance)が続々と打ち上げられることで、火星探査ブームが始まる。
希望号は环绕探测器であり、火星の軌道をめぐって探査を行う。天问一号は周回探査と地表探査を行う火星探査史上初の方法をとる。

●中国の火星探査の今までとこれから
10年ほど前、中国ではかつて火星探査機“萤火一号”を研究開発したことがある。小型で重量はわずか115㎏の探査機で火星周回する計画だった。当時は中国独自で行う力が無く、ロシアの福布斯-土壤(フォボス・グルント)と共に2011年天顶号火箭(ゼニットロケット)で打ち上げられたが、分離の時フォボス・グルントの推進装置が動かず、地球付近にとどまり、最終的に太平洋に落下した。
《中国深空测控网现状与展望》によると、中国の深宇宙計測制御ネットワークは、直径35mアンテナがある喀什地区深空站(Deep space station)と、66mアンテナがある佳木斯地区深空站と、35mアンテナがあるアルゼンチン西部ネウケン州サパラの深空站で構成され、深宇宙探査機の計測・制御を90%近くカバーできるようにする。現在、喀什深空站では直径35mのアンテナを3つ建設中で年末には稼働を始めることで、Xバンドによるデータ収集が佳木斯と同レベルになる予定。更にアルゼンチンの深宇宙ステーション計画が実現すれば通信能力が更に高まる。
天問一号の目的は、火星の形状と地質構造、表層土壌の特性と水氷分布、表層物質の構成、電離層と気候と環境の特性、火星の物理的な分野と内部構造の研究にある。今回天問一号は搭載物を13件(オービターに7件、ローバーに6件搭載しているものを含む)載せており、空中と地上の双方から同時に探査を行うことになっている。
中国の第二次火星探査は2028年頃を予定、サンプルを持ち帰る計画になっている。また2030年には小惑星探査を計画、そのあとは木星系および惑星間探査を計画している。
※ローバーに取り付けられている6つの機器とは:①勘察相机(観察カメラ)、➁多光谱相机(ハイパースペクトルカメラ)、③次表层探测雷达(地中探査レーダー)、④表面成分探测仪(地表物質検出器)、⑤磁场仪(磁気探知機)、⑥大气环境探测仪。

●なぜ7月23日に打ち上げたのか
发射窗口(Launch window、打上げウィンドウ)の選択には多くの要素が絡む。最も重要なのは地球と火星との公転周期。火星绕日公转的周期(火星の公転周期)は約687日で2年分に近い。地球が2回回ったあとに火星に追いつくこの日を“火星冲日”(火星の衝。火星、地球、太阳几乎排列成一线)と呼ぶ。
約26か月に一回の打上げウィンドウ出現のタイミングであれば、一番短い距離で一番少ない燃料で済むため、一般的にこの時を打ち上げ日にする。具体的には実際の軌道計算、ロケットのキャリア能力、打上げ場所と上空の気象条件などが関係する。

●火星の水
火星に存在する水の研究を進める。
大量の水の存在が人類が生存できるかどうかの判断の一つになる。大気に酸素が含まれていなくても水があれば酸素を作ることができる。今わかっていることは、数十億年前に、火星地表に存在した液体の水が宇宙空間に流れ出てしまったこと。
今回の火星探査において解き明かしたいのは、火星の水がどうして大気から抜けてしまったのかということ。水はどこに行ってしまったのか、どれくらいの速さで抜け出してしまったのか、火星で生活できるのかどうかを研究する。

●着陸地点がなぜ乌托邦平原(ユートピア平原)なのか
たくさんの選択肢から、地質や磁場の条件を考慮した。重要な科学的発見があることを期待してここを選んだ。

●科学研究の目標
メインテーマは生命。火星に生命存在の可能性があるのかどうか。
火星の形状と地質構造を研究し、火星全体的な地形の高精度なデータをとり、研究を深める。
土壌の特徴と水分の分布の研究や、火星全体の土壌のタイプ・風化・堆積状態の探査、水や氷の探索、土壌の断面構造の研究など。
火星表層の物質構成の研究。岩石の分類を識別、鉱物の探査、鉱物の構成分析、大気の電離層および気候と環境特性の研究。大気環境と地表気温・気圧・風・電離層・季節の変化の研究。内部構造や物理的分野、磁場特性の研究。初期の火星の地質変化、火星内部物質の分布、重力場の研究。

●今回の新しい研究対象の領域
例えば、ローバーには磁力計を付けてあるので、着陸周辺の磁場を調べることができる。それにより火星の環境変化や特性や磁場変化の過程を理解できるようになる。火星が地球と大きく違うのは、火星には部分的磁場があるものの全体的な磁場がないところ。今回の調査の結果はとても有意義なものになるはず。

●今回の探査期間
探月与航天工程中心によると、重要なのは火星の軌道をめぐること、着陸すること、ローバーを使って探査すること。飛行に約7か月、予定では来年2月に火星に接近し、重力に引かれ楕円軌道に乗り、着陸地点の事前探査と着陸地点の調整を行う。着陸後はローバーとこれを支えていた台とを引き離し、火星の地上調査を行う。オービターは中継通信の軌道上から、ローバーと交信する。大体90ソルほど探査を行った後、軌道調整して、遠隔操作を受け探査を引き続き行う。

●火星探査で難しいこと
火星探査は全世界でみるとすでに40数回行われているが、その成功率は半分に至らない。だが、これは1960年から今までの60年間の統計であり、1990年代、2000年代で見れば成功率は80%以上。2000年以降は更に発展し技術は成熟してきた。
中国で言えば、先ず打ち上げ。二つ目のポイントは7か月後火星に近づいたところで減速すること。時速は少なくとも数万キロになっており、うまくブレーキがかからないと火星を周回することができないばかりか、火星に激突する可能性もある。三つ目のポイントは火星の大気圏突入の過程、いわゆる“恐怖の7分間”とか“黑色7分钟”と呼ばれる段階。地球から遠く離れた火星へ着陸指示を送るわけにはいかず、オービターによる自動調整に頼るしかないため、そのリスクはとても大きい。もっとも難しいのは着陸した後、ローバーを動かすこと。月面探査の成功経験をもとに火星での成功を目指す。

●空间天气(宇宙天気)は探査機に影響するのか
一般的な天気とは地上30㎞以下の大気圏内の現象、つまり雨が降った風が吹いたなどのことだが、30㎞以上の大気の中高層・電離層・磁界層、更には太陽までの空間における状態や変化のことを宇宙天気を呼ぶ。
宇宙天気は宇宙ベースと地上ベースによる技術システムの正常運行に影響を及ぼす。宇宙天気で発生することは主に太陽の活動に起因する。宇宙天気の災害により衛星のトラブル、通信の中断、GPS・追跡の失効などを引き起こす。
火星探査の舞台は宇宙空間。地球にある磁界層という天然の保護が無い状態で、宇宙線と太陽エネルギー粒子線の影響を直接受ける上、シングルイベント現象が発生すれば、探査機の安全航行に影響が出るだろう。また、火星周回や着陸と地表探査では地表の土埃や砂嵐も考慮する必要がある。

●未来の人類は火星移住するだろうか
現在の太陽は壮年期に当たる。老年期の太陽は赤い巨星となって、地球の軌道まで膨張する可能性があり、地球では暮らせなくなるだろう。他の星に移住する可能性が出てくるのかと問われれば、無いとは言えないだろう。だが、仮に研究が進み、火星に人類が暮らせる可能性を見つけたとして、火星への移動距離は長く、その代価は非常に高い。冒険に心酔するとか好奇心溢れる一部の人が先達となって火星に移住するかもしれない。このような人々が研究ステーションや基地を立ち上げたら、多くの人がこの方面に携わるようになるだろう。

●人類はなぜ火星探査を行うのか
人類が惑星探査に情熱を注ぐのは好奇心があるから。好奇心は哲学的究極問題の思考から生まれる。我々人類はどこから来てどこに行くのか、我々は宇宙で孤独なのか。かつて人類は月に生命を模索した。その次は火星で、その次はタイタンなどもっと遠くの衛星や惑星だ。過去半世紀に渡り探査機を惑星や衛星に送り込んできたが、やはり火星への期待が一番高い。少なくとも我々は、40億年前の火星は温暖で湿潤で、川があったことを知っている。今の火星の姿は地球の過去なのか未来なのか。人類は地球にいつまで生存できるのか。人類は火星に移住できるのか。これら全人類に関わる疑問の解明が火星探査の最重要課題。火星の研究により地球や太陽系の形成と変化を知ることができ、未来の地球を予想する助けになる。惑星探査は最も難しい科学探査活動でであり、今までの研究と先進的技術や先端技術を集積し、国を挙げて成し遂げなければならない。言い方を変えれば、惑星探査によって総合的な国力を体現することができるのである。
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